司法書士が優しく解説!家族信託って何ですか?

家族信託とは、自分の財産を信頼する人に託して、管理を任せる仕組みのことをいいます。その際、財産の名義変更も伴うことに大きな特徴があります。

家族信託を活用することによって、認知症による銀行口座や不動産の凍結リスクを回避することができます。

知らないと大変!親が認知症になると銀行口座は凍結される!

2019-06-23

家族信託とは

家族信託の仕組み

家族信託とは家族信託というと、どうしても難しいイメージを持たれてしまいがちですが、実際はそれほど複雑なものではありません。

まず、家族信託には、委託者・受託者・受益者という3人の登場人物が出てきます。それぞれの役割は、以下のとおりとなります。

  • 委託者:もともとの財産の所有者
  • 受託者:信託された財産を使用・管理する人
  • 受益者:信託された財産の使い道となる人(通常、委託者と同一人物)

もともとの財産の所有者(委託者)は、信頼する人(受託者)に自分の財産を託します。

その際に、財産の名義を「受託者」に変更して、管理を任せることとなります。ここに家族信託の大きな特徴があります。

そして、受託者は、信託された財産を、決められた人(受益者)のために使ったり、管理していきます。これが家族信託の大まかな仕組みです。

受託者は家族しかなれないの?
家族信託なので、「受託者は家族しかなれない」と思われがちですが、そのような制限はなく、誰でも受託者になれます。ただ、財産の名義を変えてまで管理を任せることから、受託者は信頼できる家族が適任であると思われます。

もっとくだけた言い方をすると、「私(委託者)の財産を、あなた(受託者)に名義ごと託します。だから、私(受益者)のために使ってください。」といった感じになります。

つまり、家族信託とは、財産管理のひとつの方法なのです。

信託された財産は、ハンコの権限とお金の権限に分離!

信託された財産家族信託は、財産の名義を「受託者」に変更して管理を任せることに大きな特徴があります。つまり、財産の所有権は委託者から受託者へ移転し、外形上は「受託者」が所有者となります。

ただし、受託者は、自分が財産の所有者になったからといって、好き勝手に使っていいわけではなく、あくまでも「受益者のため」にしか使うことができません。

要するに、受託者は、財産管理を行うためだけの「外形上の所有者」にすぎないのです。一方で、受益者は、財産の使い道となることから「実質的な所有者」ということができます。

このように、信託をすると、もともとの財産の所有者(委託者)は所有者でなくなり、形式的な所有者(受託者)と、実質的な所有者(受益者)に分離したような状態になります。

もっとわかりやすく言うと、信託された財産について、受託者が「ハンコの権限」を、受益者が「お金の権限」を持つといった具合になります。

家族信託の特徴

1:認知症になっても、財産が凍結されない!

財産凍結しないそもそも、なぜ認知症によって財産が凍結されてしまうのかというと、財産の所有者に対して意思確認ができなくなるからです。

この点において、家族信託をすると、財産の所有権は委託者から受託者へ移転し、外形上は「受託者」が所有者となります。

すると、財産の所有者ではなくなった委託者に対しては、もはや意思確認をする必要がなくなります。この場合、意思確認は、外形上の所有者である「受託者」に対して行えば足ります。

そのため、信託をした後に委託者が認知症となっても、何ら影響を受けることもなく、財産が凍結されることもなくなるというわけです。

委任と家族信託は何が違うの?
委任と家族信託では、財産管理を任せた後の「財産の所有権がどこにあるのか」に決定的な違いがあります。

委任では、もともとの財産の所有者を委任者、管理を任される人を受任者といいますが、委任契約後も、財産の所有権は「委任者」にあります。

したがって、受任者が財産管理を行う際に、委任者に対して意思確認が求められることがあります。そのときに、委任者が認知症になっていて意思確認ができないと、「委任されているのに何もできない」ことになる可能性があります。

2:名義変更しても、贈与税がかからない!

贈与税が発生しない家族信託をすると、その財産は、外形上「受託者」が所有者となります。

ただし、税務上は「受託者」を所有者と扱うのではなく、信託された財産の使い道となる「受益者」を所有者とみなします。

したがって、委託者と受益者が同一人物である場合には、信託をしても、税務上の所有者に変更はなかったという扱いになります。

そして、税務上の所有者に変更がない以上は、贈与税や不動産取得税も発生しないということになるのです。つまり、贈与税をかけずに、財産の名義を変更したようなかたちになります。

これに対し、委託者と受益者が異なる人物であった場合には、税務上、委託者から受益者に対して贈与があったものとみなされ、贈与税や不動産取得税が発生することになります。

このような理由から、通常、委託者と受益者を同一人物にして、家族信託を始めることになるのです。

3:遺言書を作ったことになる!

遺言書の代わり家族信託を始める際には、委託者と受託者の間で信託契約書を作ることとなります。

その中で、信託が終了したときに、残っていた財産をどうするか(だれに渡すのか?)を決めておくことができます。

たとえば、「本信託が終了した場合、残余の財産については●●に帰属させる」というような条項を入れておくのです。

こうすることで、遺言書を作っておいたのと同じ効果が得られることになります。つまり、相続手続において、相続人全員のハンコをもらうことなく進めることができる、というわけです。

遺言書よりは作りやすい?
世の中には遺言書がないばかりに相続争いとなってしまった、というケースも少なくありません。

とはいえ、遺言書がどうしても死を連想させてしまうものであることから、なかなか作ることができないか、そもそも話題にさえできない家族も少なくないはずです。

しかしながら、「信託契約書のひとつの条項として、財産の承継先を指定する」となると、遺言書を作るよりは、いくぶんハードルは下がるのではないでしょうか。

まとめ

ひとつの信託契約で、現在から相続発生後までカバーできる!

家族信託の特徴家族信託には、現在から認知症発後に至るまでの財産管理、相続発生後の財産承継において、「財産管理委任契約」「成年後見人」「遺言書」の代わりとなる機能が含まれています。

それぞれの制度を利用するには別個の手続きを必要としますが、家族信託では、ひとつの信託契約の中に、これらの機能すべてを盛り込むことができます。

家族信託はこんな場面で活用できる!

家族信託の最大のメリットは、もともとの財産の所有者(委託者)が認知症になっても財産が凍結されず、受託者が管理を行うことができる点にあります。

したがって、以下のような場面で家族信託が活用されることが期待されます。

  • 認知症に備えて、今のうちから財産管理を家族に任せたい
  • 家族が認知症になったときに、財産が凍結されるのを防ぎたい
  • 家族が認知症になっても、成年後見を使わずに財産を管理したい
  • 施設費用等が必要になった時に、不動産を売却できるようにしておきたい
  • 家族と共有名義で持っている不動産を、スムーズに売却できるようにしておきたい

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