トラブルに注意!知っておくべき成年後見制度の7つのデメリット

超高齢社会と呼ばれる現在において、認知症の問題は深刻になりつつあります。

そこで今回は、認知症高齢者を支援するために一般的に利用されている「成年後見制度」について、注意すべきデメリットを解説いたします。

超高齢社会と認知症700万人時代

高齢化社会の進展と認知症患者の増加

平成27年9月、日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が、過去最高の26.7%となり、国内における80歳以上の高齢者の人口が1,000万人を超えたことを総務省が発表しました。

国民の4人に1人が65歳以上という超高齢社会において、認知症患者の数は、厚生労働省の推計で約462万人に上るとされており、その予備軍も約400万人と推計されています(平成24年時点)

また、平成35年(2025年)には、認知症患者の数が700万人を超えるとの推計値も発表されています。これは、65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症になる計算となります。

認知症患者の財産管理

認知症により判断能力が失われると、本人の意思を確認することが困難となるため、契約の締結や預貯金の引き出し、定期預金の解約、不動産の売却といったことができなくなります

したがって、超高齢社会では、高齢者の「認知症によって判断能力を失った期間」の財産管理を、誰がどのように行っていくのかという問題が生じてきました。

この点、現在、判断能力の不十分な方を支援する制度として、一般的に利用されているのが「成年後見制度」です。

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、認知症や知的障がい、精神障がい等の理由で、判断能力が不十分な方の法律行為や財産管理を支援する制度です。

成年後見は、裁判所に申立を行い、裁判所から認められることによって開始します。

成年後見制度が利用される理由
もっとも多いのが預貯金の管理・解約です。銀行手続きには本人確認が必要となるため、本人が認知症になった場合は、成年後見制度を利用せざるを得ません。このほか、介護施設との入所契約の際や、遺産分割協議で判断能力の不十分な相続人がいる場合などにも利用されています。

判断能力が不十分な方のことを「成年被後見人」といい、成年被後見人を支援する人のことを「成年後見人」といいます。

成年後見人は、成年被後見人の預貯金や不動産などの管理や、日常の生活費の管理、収入・支出の管理などを行います。

成年後見制度の7つのデメリット

成年後見制度の目的は、本人(成年被後見人)の財産を「守る」ことにあるため、成年後見人は家庭裁判所の監督下で、本人の財産を減らさないための管理を行います。

そのため、財産管理を行う上での制約や成年後見を利用する親族の負担も大きく、次のようなデメリットがあります。

1.事実上の財産凍結

本人(成年被後見人)の財産は、成年後見人の管理下に置かれ、本人のために本当に必要となる(合理的な理由のある)ことにしか使うことができなくなります。

相続税対策や生前贈与はできる?
相続税対策は、本人のためではなく相続人のための行為なので、行うことはできません。
また、生前贈与は、本人の財産を無償で譲渡する(減らす)ことなので、これもすることはできません。

したがって、いったん成年後見制度を利用すると、たとえ親族であっても勝手に手をつけることができない、いわば「事実上の財産凍結」状態になってしまいます。

2.申立てに時間がかかる

成年後見の申立をしても、すぐに成年後見人が選任されるわけではありません。

成年後見人が選任され、管理を行うことができるようになるまで、申立から2~3か月程度はかかるため、急な支出などに対応することは難しくなります。

3.必ずしも親族が選ばれるわけではない

成年後見の申立書には「成年後見人の候補者」を記載することができ、それは親族であってもかまいません。

しかしながら、必ずしも記載した候補者が選ばれるわけではなく、最終的な決定は家庭裁判所の判断によるので、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります

また、親族が成年後見人に選ばれた場合であっても、その親族後見人を監督する役目(成年後見監督人)として、弁護士や司法書士などが選任される可能性もあります。

4.専門職への報酬が発生する

成年後見人や成年後見監督人として弁護士や司法書士が選任された場合、その専門職への報酬が発生することになります。

報酬の目安
管理する財産額にもよりますが、成年後見人の場合は月2~5万円程度、成年後見監督人の場合は月1~2万円程度の報酬が発生します。

成年後見制度は原則として、本人が亡くなるまで続くので、専門職への報酬が継続的に発生することになります。

5.自宅の売却には裁判所の許可が必要

本人が施設や病院から自宅へ戻る見込みがなくなり、空き家になったからといって、勝手に自宅を売却することはできません。

売却するには家庭裁判所の許可が必要であり、その許可は合理的な理由がなければ下りません。

この点、本人に自宅以外に十分な預金があり、それで施設費等をまかなえるような場合には、裁判所の許可が下りない可能性があります。

6.途中で利用をやめられない

成年後見制度は、いったん利用すると、原則として本人が亡くなるまで継続します

したがって、管理や報告が面倒になったからといって、途中で成年後見制度の利用をやめられるわけではありません。

また、定期預金の解約だけ利用したいとか、不動産の売却だけ利用したい、といったようなことも認められません。

7.裁判所への報告義務がある

成年後見人は、1年に1回、収支状況や財産目録などを作成して、後見事務に関する報告を裁判所にしなければなりません。

まとめ

以上のように、成年後見制度にはデメリットも多く、「こんなはずではなかった…」という声も聞かれることも少なくありません。

また、成年後見制度はいったん開始すると、面倒だからといってやめることはできないので、利用をためらう人がいるのも事実です。

こういった中、近年、成年後見制度に代わる認知症高齢者の財産管理対策として、注目を集めているのが「家族信託」です。

司法書士が優しく解説!家族信託って何ですか?

2016.10.26

もちろん、家族信託も決して万能というわけではなく、身上監護のように、成年後見制度を利用することでしかできないこともあります。

身上監護とは?
介護保険に関する手続きや病院に関する手続き、施設の入退所に関する手続きなど、本人の生活や療養、介護等に関する支援を行うことをいいます。

したがって、成年後見制度を利用する際には、成年後見でできること・できないこと、デメリットや負担なども十分に踏まえて検討することが大切です。