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利用する前に知っておくべき!成年後見制度の7つ問題点

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財産管理の対策を何もしないまま親が認知症になってしまうと、預金を下ろすことや不動産を売却することが自由にできなります。

こうなった場合、裁判所に成年後見人を選任してもらい、その成年後見人に財産管理を任せるしか方法がありません(なお、このように事後的に成年後見人を選任する手続きを「法定後見の申立て」といいます)。

しかしながら、厳しい制約や負担の大きさから、成年後見人をつけたことによって「こんなはずではなかった……」という声が聞かれているのも事実です。

そこで今回は、成年後見制度の中でも特に「法定後見」の問題点についてお話しします。

目次

成年後見人とは?

成年後見人とは、認知症や知的障がい、精神障がい等の理由で、判断能力が不十分な方を保護するために、家庭裁判所から選任された人のことをいいます。

成年後見人には、親族(配偶者、親、子、兄弟姉妹及びその他親族)が選任されたものが全体の約26.2%、親族以外の第三者が選任されたものが全体の約73.8%となっています(平成29年)。

成年後見人を選任する理由
もっとも多い動機が預貯金の管理・解約です。このほか、身上監護や介護保険契約、不動産の処分、相続手続などがあります。成年後見人は、家庭裁判所の監督のもと、本人の預貯金や不動産などの管理、日常の生活費の管理、収入や支出の管理などを行います。

成年後見人は、家庭裁判所の監督のもと、本人の預貯金や不動産などの管理、日常の生活費の管理、収入や支出の管理などを行います。

成年後見制度の7つの問題点

成年後見人の大きな役割は、本人の財産を「守る」ことにあります。言いかえると、成年後見人には、本人の財産をできるかぎり減らさない、基本的に現状維持の管理が求められています。

そのため、財産の使用には厳しい制約がつき、柔軟な財産の利用ができなくなるなど、家族にとって必ずしも使い勝手のいいものとはいえないのが現状です。

それでは、成年後見制度には、どのような問題点があるのでしょうか。

1.必要最低限の支出しか認められない

本人の財産は、本人のために本当に必要な、合理的な理由のあることにしか使うことができません。

したがって、たとえば別世帯の家族が「生活費が足りないから少しもらいたい」と思っても、それは許されません。

また、相続税対策も行うことはできません。

相続税対策をすれば支出を抑えることができるので、本人の財産を守ることにつながる――。

そのように考える人も多いのですが、相続税対策は本人のためではなく、本人が亡くなった後の相続人のために行うものと考えられているため、行うことはできません。

2.申立てに時間がかかる

成年後見制度を利用するには裁判所への申立てが必要であり、申立てに当たっては準備しなければならない書類がたくさんあります。

したがって、成年後見の申立てをするまでにもある程度の時間がかかり、また、申立てをしてもすぐに成年後見人が選任されるわけではありません。

申立ての準備から成年後見人として本人の財産を管理できるようになるまで、事案にもよりますが、おおむね3~6か月程度の期間がかかります。

3.必ずしも思いどおりに選ばれるわけではない

成年後見の申立書には「成年後見人の候補者」を記載することができ、それは親族であってもかまいません。しかしながら、必ずしも記載したとおりに選ばれるわけではありません。

最終的な決定は家庭裁判所の判断に委ねられているので、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。

したがって、その場合にはまったく見ず知らずの専門職が「私が成年後見人になりました」とやってきて、通帳などを持っていってしまうことになるのです。

また、親族が成年後見人に選ばれた場合であっても、弁護士や司法書士がその親族後見人を監督する役割(成年後見監督人)として選任されることもあります。

以上から、成年後見の申立てをすると、何らかのかたちで専門職がかかわってくる可能性が高いといえます。

4.専門職への報酬が発生する

成年後見人や成年後見監督人として弁護士や司法書士などの専門職が選任された場合、その者への報酬が発生することになります。

報酬の目安
管理する財産額にもよって変わってきますが、成年後見人の場合は月3~6万円程度、成年後見監督人の場合は月1~2万円程度の報酬が発生します。なお、報酬額は裁判所が決定します。

いったん成年後見人が選ばれると、基本的にその職務は本人が亡くなるまで続きます。

したがって、専門職がかかわっていた場合には、その者への報酬も本人が亡くなるまで発生し続けることになるので、ある程度のコストがかかるといえます。

5.自宅が売却できるとは限らない

本人が施設や病院から自宅へ戻る見込みがなくなったからといって、勝手に自宅を売却することは成年後見人であってもできません。

自宅を売却するには家庭裁判所から許可を得ることが必要であり、そのためには「売却しなければならない理由」が必要となります。

この点、売却代金を介護費用に使うことは正当な理由と考えられます。しかしながら、本人の資産として自宅以外に十分な預金があり、それで介護費用をまかなえるような場合には、裁判所から売却の許可が下りない可能性もあります。

有価証券の売却
株式など有価証券の売却は、家庭裁判所の許可が必要とされているわけではありませんが、自宅の売却と同じように、十分な預金があるような場合はできない可能性があります。

6.裁判所への報告義務がある

成年後見人には、定期的に収支状況や財産目録などを作成して、後見事務に関する報告を家庭裁判所にしなければならない義務があります。

この報告義務を怠ると、成年後見人を解任されてしまうこともあるので、きちんと家庭裁判所に報告書を提出しなければなりません。

とはいえ、親族が成年後見人になっていた場合は、報告書を作成することは大変な作業であり、大きな負担になるものと思われます。

7.途中で利用をやめられない

定期預金の解約、不動産の売却など、成年後見人を選任することの目的が達成されたとしても、成年後見の利用をやめることはできません。

また、裁判所への報告が面倒だとか、成年後見人の弁護士や司法書士と相性が合わないといった理由でも、途中で成年後見を終わりにすることはできません。

つまり、ひとたび成年後見人が選ばれると、基本的に本人が亡くなるまで成年後見が続いていくことになります。

したがって、弁護士や司法書士などの専門職がかかわっていた場合には、その者への報酬も本人が亡くなるまで発生し続けることになります。

元気なうちに行いたい認知症対策

以上のような理由から、成年後見制度を利用したことによって、「こんなはずではなかった……」という声も聞かれています。

このような事態を防ぐには、事前に何らかの認知症対策をとっておかなければなりませんが、そのひとつに「任意後見制度」があります。

これを利用するには、本人が元気なうちに任意後見人の候補者との間で、将来認知症になったときに後見人になってもらう契約(任意後見契約)を結んでおく必要があります。

任意後見の良い点は、誰と契約を結ぶか(任意後見人を誰にするのか)を自分で決めることができるので、少なくとも、法定後見のように誰が成年後見人になるのか分からないという状況は回避することができます。

こういった中、成年後見制度に代わる新たな財産管理の方法として、近年、注目されているのが「家族信託」です。

もちろん、家族信託も決して万能というわけではなく、身上監護のように、成年後見制度を利用することでしかできないこともあります。

身上監護とは?
介護保険に関する手続きや病院に関する手続き、施設の入退所に関する手続きなど、本人の生活や療養、介護等に関する支援を行うことをいいます。

したがって、成年後見制度を利用する際には、成年後見でできること・できないこと、問題点等を十分に踏まえて検討することが大切になります。

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