知らないと大変!親が認知症になると預金が引き出せない!
「親の介護費用は、親のお金でまかなおう」
そのように考えていても、親が認知症になると預金が下ろせなくなり、親の介護なのに親のお金が使えない状況になってしまうこともあります。
思わぬトラブルを避けるためにも、親が認知症になると財産管理にどのような影響を及ぼすのかを、しっかりと理解しておくことが大切です。
認知症700万人時代の到来へ
近年、認知症を発症する高齢者が増え続けています。これに関して、いくつか数値を挙げてお話ししていきたいと思います。
総務省の発表によると、2012年9月現在の推計で、65歳以上の高齢者人口は3,079万人であり、日本の総人口に占める割合は24.1%(※2018年9月現在の推計では3,557万人、割合は過去最高の28.1%)ということでした。
つまり、国民の4人に1人が65歳以上という、超高齢社会であることを表しています。
そして、厚生労働省の発表によると、65歳以上の高齢者のうち、2012年時点における認知症患者数は、約462万人と推計されています。また、MCI(軽度認知障害)をもつ高齢者も、約400万人と推計されるとのことでした。
MCI(軽度認知障害)とは
認知症まではいかないが正常ともいえない、認知症の一歩手前の状態のことをいいます。これを放置していると、数年後に認知症に移行する可能性が高いとされています。
以上から、認知症患者とその予備軍を合わせると、約862万人にも上ることになります。
さらに、2025年には認知症患者の数が700万人を超えるとの推計値も発表されています。これは、65歳以上の高齢者のうち、実に5人に1人が認知症を発症する計算となります。
このような数値からも、認知症高齢者の増加は、深刻な問題になりつつあることがおわかりいただけるかと思います。
親の介護なのに、親のお金が使えない……
親が認知症になると、預金が下ろせない!
それでは高齢者が認知症になると、どのような問題が生じるのでしょうか。
国民の4人に1人が65歳以上という超高齢社会においては、これから先、私たちの親が病院に入院したり、介護施設に入所したりするような場面がますます増えてくるものと思われます。
それに伴い、入院費用や施設費用をどう捻出するか、という問題に直面することになります。この場合、「親の介護費用なので、親のお金でまかなおう」と考えるのが自然な流れかと思います。
しかしながら、親が認知症になると、預金を下ろしたり、定期預金を解約したりすることができなくなります。なぜなら、親の財産を動かすには、親の「意思確認」が必要となるからです。
したがって、親の預金を下ろそうと家族が銀行窓口に行っても、まずは「ご本人を連れてきてください」と言われてしまいます。
そこで、親を銀行に連れて行っても、認知症で意思確認ができない状態であれば、やはり預金を下ろすことはできません。
「預金を下ろせないと介護費用が払えないので……」と、いくら事情を説明しても、親の意思確認ができない以上は、ダメなものはダメと言われてしまいます。
ひと昔前ならば、通帳とハンコさえ持っていけば、家族でも親の預金を下ろせたりもしましたが、今はそのような時代ではありません。
親が認知症になると、不動産が売却できない!
同じように、親が所有者となっている不動産を売り、売却代金を介護費用に充てたいと考えていても、親の意思確認ができなければ、売却手続を進めることはできません。
当然、家族が代理で売却手続を行うこともできません。
このように、親が認知症になると、銀行口座や不動産は、たとえ家族でも手がつけられない、事実上の凍結状態になってしまいます。
「家族だったら預金は下ろせる」ことも、「銀行に事情を話せば何とかなる」こともありません。
その結果、「親の介護なのに親のお金が使えない……」状況になってしまうのです。
認知症になったら、成年後見しかない!
このような場合、銀行や不動産会社、司法書士からは、「成年後見人をつけてください」と言われます。
認知症で判断能力が低下した方の預金を下ろしたり、不動産を売却したりするには、裁判所に成年後見人を選任してもらい、その成年後見人に代理で手続を行ってもらうしか方法がないからです。
しかしながら、成年後見人をつけてしまうと、財産の使い方については、家庭裁判所の監督下で厳しい制約がつき、柔軟な利用ができなくなるなど、家族にとって必ずしも使い勝手のいいものとはいえません。
こういった中、成年後見制度に代わる新たな財産管理の方法として、近年、注目されているのが「家族信託」です。
家族信託を利用することで、親が認知症になっても預金を下ろせるようになり、介護費用の支払いに困ることはなくなります。
「親の介護で親のお金が使えなくなる」問題の解決策として、今後、ますますニーズが高まっていくものと思われます。