きょうだい2人で受託者になることはできますか?
受託者による使い込み等を防ぐために、受託者を複数にして、互いを監督しながら管理を行いたいという要望を受けることがあります。
結論からいえば、受託者を複数にすることは可能です。
しかしながら、以下の理由から、受託者は複数にせず、1人にするほうが好ましいといえます。
受託者を複数にすることを避けるべき理由
1:信託事務が滞ってしまう可能性がある
受託者が複数の場合、信託事務の処理は、原則として受託者の過半数をもって決定することになります。
したがって、受託者が2人の場合で意見が対立してしまうと、信託事務が滞ってしまう可能性があります。
認知症による財産凍結対策のために信託をしたはずなのに、スムーズな財産管理ができなくなっては、信託の本来の目的が達成できなくなってしまいます。
2:銀行から待ったがかかる可能性がある
信託口口座を開設する際には、銀行が事前に信託契約書の内容を確認します。
その際、受託者が複数になっていると、銀行から受託者を1人にするよう修正を求められる可能性があります。
銀行からすると、受託者が複数だと取引の相手方も複数となるため、信託事務を処理するに当たり、受託者への確認に関する問題が生じるおそれがあるからです。
そのため、受託者が1人でないと、信託口口座の開設を断られてしまう可能性もあります。
他のきょうだいを関与させたい場合は、違う役割を!
とはいえ、受託者を1人にした場合に、その者がしっかりと管理をせず、使い込んでしまうといったリスクがないとは言い切れません。
そのような場合は、もう1人には、信託監督人や受益者代理人といった地位に就いてもらい、受託者を監督していくという方法が考えられます。
予備的な受託者(第2受託者)
あるいは、事案によっては、受託者が欠けてしまった場合の予備的な受託者(第2受託者)として待機しておいてもらう方法も考えられます。
以上のように、受託者を複数にするよりは、それぞれが異なる地位に就いて家族信託を進めていくほうが好ましいといえます。