不動産を家族信託すると、登記はどうなりますか?
家族信託は、財産の名義を「受託者」に変更した上で、管理を任せることに大きな特徴があります。不動産を信託した場合も、委託者から受託者に名義変更が行われます。
それでは、不動産の名義変更を行うと、登記簿にはどのように記載されるのか見てみましょう。
目次
甲野父郎さんの事例
甲野父郎さんが、自宅を息子である甲野一郎さんに信託した場合を例に見てみます。なお、信託の当事者は、以下のようになります。
- 委託者:甲野父郎(もともとの財産の所有者)
- 受託者:甲野一郎(信託された財産の管理を行う人)
- 受益者:甲野父郎(信託された財産の使い道となる人)
事例の詳しい内容は、下記をご覧ください。
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家族信託した不動産の登記簿について
権利部(甲区)の記載
登記簿の権利部(甲区)には、所有権に関する事項が記載されています。不動産を信託することにより、受託者が新たな所有者として記載されます。
- もともとの不動産の所有者として、甲野父郎が記載されていました。
- 信託をしたことにより、受託者(甲野一郎)に名義が変更されました。
登記簿上の所有者(外形上の所有者)が甲野一郎になったことで、不動産を売却する際に、売買契約書にサインや押印をするのも甲野一郎となります。
甲野父郎は所有者ではなくなったので、手続きに関与する必要はありません。
したがって、家族信託をした後に、甲野父郎が認知症になったとしても、何ら影響を受けることはありません。
つまり、成年後見人をつけることなく、受託者である甲野一郎だけの手続で、不動産を売却することが可能となります。
信託目録の記載
不動産を信託すると、名義が受託者に変更されるのと同時に「信託目録」というものが作成されます。この信託目録には、信託の当事者や信託条項の内容が記載されることとなります。
- 委託者として、もともとの財産の所有者が記載されます。
- 受託者として、信託財産の管理を行う人が記載されます。
- 受益者として、信託財産の使い道となる人が記載されます。
- この信託が、何を目的としてされたものかが記載されます。
- 信託財産の管理方法として「換価処分することができる旨」が記載されていることで、受託者に不動産の売却権限があることがわかります。
- 信託の終了事由として、この信託をいつ終わらせるのか(いつまで続けるのか)を記載します。
- その他の信託条項として、信託終了後の残余財産の帰属先を指定しておけば、これが遺言書の代わりとなります。その結果、他の相続人全員のハンコをもらうことなく、指定した人に不動産を引き継がせることができます。