親が認知症でも家族信託をすることができますか?
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家族信託を始めるには判断能力が必要
家族信託は、委託者(もともとの財産の所有者)と、受託者(信託財産の管理を行う人)との間で、信託契約を結ぶことによって開始します。
そのため、委託者・受託者の双方に、信託契約を結べるだけの「判断能力」が必要とされます。
どの程度の判断能力が必要か?
自分の名前や生年月日などを正確に言えたり、書けたりすることに加えて、少なくとも、財産管理を任せるという内容を理解していること、その意思が確認できることが必要です。
したがって、すでに認知症と診断されている場合には、家族信託を始めることは「難しい」と言わざるを得ません。
しかしながら、絶対にできないかといえば、必ずしもそうとも言い切れず、認知症と診断されていても、症状が軽度であれば、まだ家族信託ができる余地はあると思われます。
逆にいえば、まだ認知症と診断されていない場合であっても、結果として家族信託ができなかった、ということが起こる可能性も十分に考えられます。
専門家や公証人が判断能力を見極める
それでは、家族信託ができるかどうかの判断は、だれがどのように行うのでしょうか。
信託契約書は公正証書にするので、信託契約の締結は、公証役場で、公証人の面前で行います。
したがって、最終的には公証人が判断を下すことにはなります。
ただし、公証役場での契約に至るまでには、事前に司法書士などの専門家が面談を行いますので、まずは専門家において、家族信託ができるかどうかを判断することになります。
このように、家族信託ができるかどうかの基準は、必ずしも明確なものがあるわけではなく、グレーと言わざるを得ないのが現状です。
したがって、場合によっては医師の診察を受けてもらうなどして、専門家や公証人が個々の事案ごとに慎重に見極めていくことになります。